オッチャン鉄ちゃんの足のむくままタイトル
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旅めぐり脱線百話:Sp-032列車

餘部の春

no.057●15.06.24
メイン057写真
  ◎餘部鉄橋を背景に、青空にパタパタと鯉のぼりがはためく。(鎧~餘部)

 連休さなかの五月の空は、雲ひとつない青空が広がっていた。
爽やかに吹きわたる海風にのり、家々の屋根の上には青や赤の鯉のぼりが元気に泳ぎまわっていた。

 トントンと階段をのぼる足音がした。
この春、大阪の大学に入学したばかりのハルオが柱の影からニュウと顔をだした。
「ただいま、お母ちゃん。…うわぁ、なつかしいなぁ!この窓の景色!」
「お帰りっ!なんやあんた、もう大阪から帰ってきたんかいな。
この前、出て行ったばっかりやないの。ちゃんと勉強してんのか?」
「入学式が終わったら、すぐに連休やからしょうがないねん。そや、紹介するわ。明美さん」
「ええっ!かっ、彼女か!早よう言いなさい、あんたは……。
まぁ、始めまして、ハルオの母でございます…。あれっ、明美さんてあの…」
「ハハハッ。小学校の同級生の、あの明美さんや。偶然おなじ大学のおなじクラスやってん」
「まぁ!綺麗にならはって」
子供のころの面影があるものの、眼の前の顔と一致しないのか母はしきりに首をかしげた。
「僕ら、いま恋人同士やねん。来年の春に結婚する予定や。かまへんやろ、お母ちゃん。明日、明美さんのお父さん、お母さんに会いにいくねん。なぁ……」

 ハルオは明美の顔を見つめると、彼女の白い手をそっと握った。
明るい日差しを受けた窓辺に、キラキラと眩しく光る日本海が見えた。

 ゴー、ゴーと鉄橋をわたる列車の音がした。
ハルオはひょいと首を伸ばすとニッコリ笑いながら、窓から見える山陰本線の餘部鉄橋をなつかしそうに眺めるのだった。




 JR山陰本線は、明治30年に京都鉄道により京都~園部間が開通。その後、部分開業を重ね、昭和8年2月24日、京都~松江~幡生間が全通した。


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◎家々の屋根をかすめて、列車が鉄橋を渡る。(鎧~餘部)

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◎海岸から高くそびえ立つ、険しい山の中腹に顔をだす列車。(鎧~餘部)

no.057_04
◎見あげるほどの中空を行く。(鎧~餘部)

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◎トンネルを出ると、地平は遙かな眼下にあった。(鎧~餘部)

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のどかな漁村にそって走る列車。(竹野~佐津)

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海辺の家々の頭上を走りすぎる。(竹野~佐津)

no.057_08
「出石」は但馬の小京都と呼ばれる城下町。 名物'出石そば'のお店が、町中の至るところにある。(出石城址)

◎写真の人物はイメージです。文中の登場人物とは一切関係ありません。
◎JR山陰本線(2002.07.28~2005.03.06撮影 Cr/2009.04.15)


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