オッチャン鉄ちゃんの足のむくままタイトル
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旅めぐり脱線百話:W-022c列車

仰げば尊し悪太郎

no.037●14.03.11
メイン037写真
  ◎夕日が美しい山すそを行く列車。(東雲~丹後神崎)

 日本海を間近にした円山川ぞいの豊岡は、風光明媚な美しい町である。

 '悪太郎'こと作家、故・今 東光は関西学院中学部を女学生との不純異性行為(う~む、懐かしい響き…)により退学となり、大正3年、落胆する母と共に官営鉄道、東海道線と開通して間もない山陰線を乗りつぎ、現在の北近畿タンゴ鉄道の始発駅、豊岡に到着。兵庫県城崎郡、豊岡中学校に入学した。

 翌日登校した彼が目にしたのは、豊岡のマドンナとよばれる校内No.1の美少女、恵美子だった。
 肩までのびた艶やかな髪に、ふし眼がちな長いまつ毛の大きな瞳、スリムなセーラー服を窮屈そうに押し上げる、その豊かすぎる胸のふくらみ、それらのすべてが東光の欲情を激しく刺激した。

 「僕は今日から豊岡中学に入学した、今 東光と言います。一目であなたを大好きになりました。僕は、僕は、あなたが、だっ、だっ、だっ、大好きでオマンにゃわ~~~!」
 いきなり何とゆー大胆な発言!しかも、丸出しの関西弁であった。
 「ええええっ!」と驚く恵美子の肩を抱きしめ、激しくチュウをする東光はエライ!
 アノ手コノ手で、婚約者のいる彼女と深い仲になった東光は、ついにかけ落ちを決意するが恵美子は親に止められ、又もや退学を命じられた東光はただ一人、東京へと旅立つ。

 ああ!若いとは素晴らしい!
 その後、東光は川端康成らと共に第六次「新思潮」に参加。文学に才能を表すも突如として出家。そして昭和35年「お吟さま」で直木賞を受賞、再び文壇に帰り咲いた。

 千日前の映画館の暗がりのなか、 今 東光原作の映画化「こつまなんきん」の主演、嵯峨美智子のチョーエロっぽい唇に高校生のオッチャンはたまらず鼻血をタラ~。そしてこの豊岡時代を映画化した「悪太郎」にも、熱き血潮が騒ぎ出し、ふと、何をカン違いしたか自分自身も上京を決意!
 しかし、かの'悪太郎'のごとき活躍もなく、又々古巣、大阪に舞いもどるも未だ大成せず。
 今日もむなしく見果てぬ夢を抱きながら、喫茶店のガラス窓からひとり、寒々とした冬の土佐堀川を眺め、あの嵯峨美智子似のエロっぽい人魚でも泳いでないかと、ひたすら水面を凝視するのだった。




 北近畿タンゴ鉄道・宮津線は大正13年、舞鶴(現・西舞鶴)~宮津間を国鉄峰山線として開業。翌年、宮津~峰山間まで延伸。さらに峰山~豊岡間を延伸の上、国鉄峰豊線として昭和7年全線開業。同時に舞鶴~豊岡間を宮津線と改称した。平成2年、同線は民営化され、第三セクター「北近畿タンゴ鉄道」と名づけられた。

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◎列車は除々に勾配を上げ、海岸部から山間部へと入っていく。(網野~木津温泉)

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◎朝の光がやわらかく風景をつつむ。(栗田駅)

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◎豊作を祝って秋祭りがはじまる。(西舞鶴~四所)

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◎神社のノボリが、パタパタと秋風にたなびく。(丹後神崎駅)

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◎たそがれ時、山すその踏切を列車が通過する。(丹後神崎~丹後由良)

◎北近畿タンゴ鉄道・宮津線 (2002.07.27~2011.10.10 撮影、Cr/2008.08.16)                        
※この物話はフィクションであり、使用した写真の建築物、施設等には一切関係ありません。



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