オッチャン鉄ちゃんの足のむくままタイトル
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旅めぐり脱線百話:W-020d列車

肛門科へ行こう
その4

no.031●13.12.17
メイン031写真
  ◎水面を夕日に染める淀川鉄橋を渡る。(梅田~中津)

 最上階のスペシャル個室の大きな左右の窓に広がる夜景に、好村は思わず息をのんだ。
暗い夜空に立林するカラフルな照明を浴びた、ビル街の夥しい数の窓の灯りが煌めき、その根元には宝石箱をひっくり返したような無数の灯りが輝きあっていた。

 北側の窓からは新御堂筋を走る多くの車のライトが広大な淀川を跨ぎ、黒々と連なるはるかな北摂の山々に向かって、まるで地上から夜空に向かう銀河のように煌めき流れていた。
 あの長く尾をひく流れ星は地下鉄御堂筋線の列車の灯だ。淀川の少し下流の水面を輝かせながら川面を大きくひとまたぎするホウキ星は、阪急電車のヘッドライトと窓の明かり。
 華麗な夜景に囲まれて好村はその見事な眺めにうっとりと見とれていた。

 病室の窓際には広々としたテーブルをはさんで、豪華なレザー張りのソファーが置かれ、きらびやかな金糸に輝くクロス貼りの壁には、手の込んだ重厚な額縁に古風な礼装の老人の油絵が掛かっていた。
 この病院の創始者の肖像画であろう。特に窪んだ目の描写が見事だ。黒い眼球の輝きと、細かな毛細血管まで、まるで本当の人間が生きているように好村には見えた。
 'ヘッ、ヘックション'壁からくしゃみの音がした。となりの病室の患者だろう。立派な造りにみえるが、以外に安普請なのだ。
 それにしても、ここが病院の一室とは誰が見ても信じられまい。まるで高級ホテルのスイートルームだ。ただ様々な医療器具が付いている広すぎるベッドだけが、唯一病室らしさを漂わせていた。

 コンコン。ノックの音とともにドアが開いた。ギッ、ギギギギーッ。近代的な部屋らしからぬ怪しい音が響いた。好村は子供の頃に行った幽霊屋敷を思いだしながらヌッと顔を突きだした。
 看護婦が山盛りの薬や大きな検査機器をステンレスの台車に載せてやってきた。
 くるくるとカールした、栗色に染められた髪にピンクのナース帽をちょこんと載せ、胸あての付いた白いフリルの短かすぎるスカート姿のあどけない顔だちの看護婦は、おとぎ話の'不思議の国のアリス'のような長いまつ毛の大きな瞳の女の子だった。

 エプロンの内側に着ている帽子と同じピンクのブラウスの制服は、まだ幼さの残る華奢な身体つきに似合わない、形よく盛りあがったふたつの乳房に押されて大きく前に突きだしていた。

「好村さんのお世話をするようにと、春奈先生から言いつかってまいりました。アサリ、いえアリサと申します。ケツ、いえ肛門の出血は治まりましたか?」

「ええ、何とか…」
「春奈先生はホントに優秀な先生で院長先生もいつも誉めてらっしゃいますわ。勉強家で熱心でその上すごくお綺麗で。若くて、ハンサムな男性の患者さんにも大人気なんですよ。じゃあ好村さん、ガウンを脱いでベッドに横になってください。もちろんパンツも脱いでくださいね」(続く)

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◎岸辺の水草ごしに、夕闇せまる淀川を列車が走り過ぎる。(梅田~中津)

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◎JR貨物の操車場跡や新しく完成した高層ビルにも、
冬のたそがれが迫る。(中津駅付近)

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◎阪急梅田駅の周辺は常に人波がたえない。(阪急梅田駅付近)

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◎阪急梅田駅構内の、都心らしからぬ憩いの一角。
(阪急梅田駅)

◎阪急電鉄・京都本線(2009.02.14~2013.10.06撮影、Cr/2008.11.20)                        
※この物話はフィクションであり、
その内容は使用した写真の建築物、施設等とは一切関係はありません。



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