オッチャン鉄ちゃんの足のむくままタイトル
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旅めぐり脱線百話:A-017f列車

湖畔のたそがれ その⑥
琵琶湖の夕風

no.029●13.11.19
メイン029写真
  ◎湖畔に向かい国道161号線の併用軌道を走行する800系。<上栄町~浜大津>


 大津祭の余韻もすっかりおさまり、町々にも秋の気配が色濃く漂いだした。

 東京の小さなマンションから大学にかよう雄太が、ひさしぶりに大津の母のもとに帰ってきた。
「お帰り雄太、まあ一段とたくましくなって、ホンマに亡くなったお父さんにソックリになってきたわ…」
みるみるうちに涙で潤む母の目は、どこか遠い昔の父の面影を懐かしんでいるように見えた。

「今回はゆっくり出きるんでしょ」
 久しぶりに母と一緒に大津の町へ散歩にでた。
若くして父とむすばれた母もすでに40才は超えているはずだが、まだまだ張りのある色白の肌にくっきりとした目鼻だち、くびれた腰に大きく豊かすぎる胸は、すれ違う男性たちの視線をうばった。

「蝉丸神社によってみましょ。雄太が小さかった頃、亡くなったお父さんと三人でよく行ったところよ」
 京阪京津線の走る大通りをすこし入った所にその神社はあった。
 秋の日暮れは早い。暗くなった境内に琵琶湖から吹く夕風が冷たい。
「う~っ寒い!」
急に母の腕が雄太にからみつく。その豊かすぎる胸のふくらみが雄太の腕をやさしく包んだ。
「今夜はあったかいお鍋がいいわね」

 母と子、親子みずいらずの夕食がはじまった。家の前をゴトゴトと京阪坂本線の電車が通りすぎる音がする。
「ねえ雄太。東京で一緒に暮らしていた恵子さんとは、もうお別れしたんでしょ?お母さんがきっと素敵なお嫁さんを見つけてあげるわネ」
「ウッ、うん…」
急に東京に残してきた恵子の笑顔がまぶたに浮かんだ。
「僕、先にお風呂に入るよ」
雄太は毎夜、マンションで一緒に入る恵子のピチピチとした身体を思いだした。

終電の走る音を合図に雄太は床についた。ウトウトと眠りかけた時だった
「雄太、お母さん寒くて眠れないの。横に寝ていい?」
「う、うん。いいよ…」
 スポーツで鍛え上げられた逞しい雄太の背に、やわらかく暖かい、二つの巨大な肉のかたまりが押しつけられた。
「ああ~、あったかい……」
 ほのかにコロンの匂いが鼻をかすめた。母の息づかいが聞こえる。雄太にはそっと動く、母の白い華奢な指先が、まるで自分の下半身の反応をさぐるように、優しく艶めかしく動きまわるように思えるのだった。(続く)


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◎蝉丸神社の鳥居ごしに列車の灯りが流れる。(大谷~上栄町)

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◎大津、京都間の険しい県境を越える。(大谷~上栄町)

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◎浜大津をめざし、併用軌道区間に進入する。(上栄町~浜大津)

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◎たそがれ時の浜大津駅。(浜大津駅付近)

  ◎この物語はフィクションであり、その内容は使用した写真の建築物、
  施設等とは一切関係はありません。
  ◎京阪電気鉄道・京津線(2004.08.04~10.13撮影、Cr/08.07.04)


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