オッチャン鉄ちゃんの足のむくままタイトル
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旅めぐり脱線百話:Su-016列車
ラッセル車はお昼寝中

no.017●13.06.04
メイン017写真
  ◎真夏の駅構内にて。(伏木駅)


 JR氷見線、伏木駅の構内でグ~グ~と昼寝をムサぼる工事用車両は、冬の豪雪時にはラッセル車としても活躍する。
 出番が少ないこの時期は、ひたすら睡眠バケーションを楽しむのだ。

 日本海を目の前にしたこの地は、江戸時代は北前船の寄港地として栄え、今また環日本海の拠点としてヨーロッパ、旧ソ連、韓国、中国への船便の発着地として注目を浴びている。

 万葉の昔、この地に越中国国守としてあの'万葉集'の編纂に関わった歌人、大友家持(おおとものやかもち)が単身赴任した。あの匂うが如く咲きほこる華やかな奈良の都から、草深いここ越の国に転勤を命じられた家持の心境はいかばかりで在っただろうか。
 海鳥たちのむれ飛ぶここ奈呉の海辺は古代でも先端の交易の港で、滑川の翡翠やコシヒカリの原種のおいしい穀物などを積込み、日本海各地を訪れていたのである。
大いに栄えた港の賑わいはきっと家持の心を元気付けたことであろう。

 '奈呉の海の 沖つ白波しくしくに 思ほえむかも 立ち別れなば'

 やさしい午後の陽の光が降りそそぐ春の日、与えられた粗末な国守邸の庭に一人たたずむ家持は、風にのって聞こえる潮騒を耳にしながら、遠い都の宮廷内裏の奥深く、あのひそかに心寄せていた雅ななかにもエロチックな女官の端正な横顔を想い浮かべた。
 「ああ、あの女はわれの留守の間にあの宮廷NO.1の若いハンサムな君麻呂に言い寄られているに違いない…」
 あらぬ妄想にやきもちを焼くやき持、いや家持の脳裏にハタとある女人の面影が浮かんだ。
 「そうじゃ副国守にヒカルと云う娘がおったのう、一度口説いてみるかな…。いや、思い出したぞ。この裏に住む次官の娘は19歳で絶世の美女だとか。その娘のところに副国守の弟の元実を使いに出して…」

 都では有名な策略家である家持は、アレコレと悩みつつ暖かい陽ざしのもと、いつしかあのラッセル車のようにウツラウツラと心地よい午睡に付くのであった。




 大伴連は五世紀中葉に台頭した軍事氏族であり、元来、越の国に勢力をもつ豪族であった。
 大伴家持の有名な長歌「陸奥国 金を出せる詔書を 賀ぐ歌」に
 (前略)'海行かば 水つく屍 山行かば 草むす屍 大君の
     辺にこそ死なめ顧みは せじと 言立て'(後略)
 という箇所があり、太平洋戦争当時、この部分を日本軍の軍歌として戦意高揚の目的で流用し使用された。また現在でも右翼の街宣車から時おりこの曲が流れており、耳にすることができる。


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◎駅構内専用のディーゼル車。(伏木駅)

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◎広大な敷地には静寂が漂う。(伏木駅)

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◎ビッシリ並べられたレール。(伏木駅)

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◎巨大な倉庫はまるで工場のよう…。(伏木駅)

  ◎JR氷見線(2004.08.25撮影、 Cr/2008.07.01)


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