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第三章#2タイトル
 
 
ー最初から、丁稚奉公から楽しかったんですか。
 
藤本   丁稚奉公から入ったときは、
まぁね、若いからやろね。
楽しいというよりもこれを私の天職にして行かなアカンって。
早く一人前になって独立して。

父親は歳いってるし、母親からはお前は兄貴やから
弟妹のこと見たげて欲しいという頼みがあったから必死でしたね。
 
ー好きなものがどうのとか、そういうもんじゃなくて。
 
藤本   そういうもんじゃなくてね。
生きて行くために早くこれを自分のものにしたい!と。

せやけど途中でやっぱり天職ではない!
私にはこういうところが足らん!って言う事が
たんとありましたよ。
 
ーえぇ!何が足らんかったんですか。
 
藤本   要するにね、同じように習った親方の娘さんがいますねん。
ものすご、揃った事がでけますねん。

ところが私にはあの娘さんのような揃った仕事がでけない。
なんか雑念入るのか本能的に。
さっきやってた柳にツバメの模様かて初めて見たらよう、
上手い事あんな間隔とっていけてるって思うけどもっと細かいもん。

あの人がやった見本がありますけど。
歌うたいながらしよんねん。
こっちが必死にやっても揃わんのに鼻歌うたいながらでける。
天職ちゃうんかなって思ったことあります。
それは未だにショックやし、私自身本当の職人さんになれん。
 
ーえー!そんな事ないでしょ。
 
藤本   そういう事がありましたな。
これですよ。その人の仕事は。
 
第三章2-1写真
 
ーおぉ!
 
藤本   下書きなしでね、しはるんです。
 
ー下書きなしでですか!
 
藤本   下書きありませんよ。
上の線と下の線引くだけです。
これがキレイに引けるんですね。
 
ースゴいですね。
 
藤本   これだけの仕事、私でけません。
 
 
藤本   九州にね私の妹がおりますねん。
八つ離れてるのかな、下から二番目の妹がおりますねん。

それがねこの間作品展に見に来てくれてね。
その妹も私と一緒で絵が好きで。
あのカレンダー描いたんですわ。
 
第三章2-2写真
 
ー画家さんですか
 
藤本   いやいや、自分の楽しみでね。
今までは絵手紙送ってくれてたんでね。

ご主人が毎日新聞勤めとってね、去年、一昨年かな、亡くなって。
今することないさかい。
昔のモン引っ張り出してこんな事してんねん言うてね、
カレンダー作ったさかい使こてって。
 
ー自費出版ですか?
 
藤本   ハハハそんなね。
 
ー優しい、いい絵ですね。
 
藤本   この妹にね私、ローマ字教えてもろうた。
 
ーほぉ〜。
 
藤本   小さい時分は戦時中でしょ。
ローマ字禁止でしょ。
数学の公式でさえ三角形「いろは」でしか習ってません。
 
ーえぇ〜
 
藤本   三角形いうのはABCが普通やのに、私らの時代は三角形いろは。
ハハハハ
国民学校の時代、
わたしらから1ヶ上から下は3つぐらいまではそう習ってました。
 
ー藤本さんは何年生まれなんですか?
 
藤本   四年生まれです。
昭和四年です。
だからね、国民学校高等科二年上がってすぐに
兵隊に行ってんねんから十四やから、
一、二年上、もうちょっと上は英語も習ってすんです。
 
ーそうなんですか。じゃあ第二次世界大戦のその時期だけ。
 
藤本   その時期だけです。

で、大阪来て、親方が夜なべすんのが嫌いでね、
なんぼ忙しいても夜は仕事しないから。
そうすると夜ヒマで仕方なかったからね、それでこんな時にね。

駅名がローマ字になりましたよね戦後ね。
だからせめてローマ字ぐらい読めるようになっとかんことには、
これから困るなぁって思って。
妹とローマ字で手紙のやり取りして。
ちょっと離れてますねんけど。
 
ーすごい。立派ですね。
 
藤本   いやぁ…。ハハハハ
 
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