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ーー
 
ちょっと見せてもうてよろしいですか。

   
西尾さん顔 あぁ見てや。

ーー

このペン先変わってますねぇ。


2-3写真1

2-3写真2

西尾さん顔 それ針ペンいうてね。
これ押さえたらペコってへこみまんねん。

インクをぐっと押さえて書けまんねん。

ーー

へぇこんなん初めて見ましたわ。

西尾さん顔 それは引っかかるよ。

ーー

あぁ書きにくいんですか。

西尾さん顔 かえってね。

ーー

この黒はキレイですね。

西尾さん顔 エボナイトはな。

ほんで金ペン付けたらキレイでっせ。

悲しいかなこれを使う軸が無い。
2-3写真3

ーー

え、ほんならこれはもう使えないんですか。

西尾さん顔 金プラチナ高価買い取りに
売ったらええねんからな。

ハハハハ

西尾さん顔   潰しにしたらでけるわけや。
18金やけど溶かすねんから。
せやからこういう昔の
ペン先やったら使えるわけや。

2-3写真4

ーー

これは宝モンですよね。

西尾さん顔 そうや、金やからね。

ーー

そうか金ですもんね、ホンマの宝モンや。


ハハハハ

西尾さん顔   こういうヤツの中にも
ウチのんとちゃうやつもありますんや。
商売辞める言いはったとこの
商品を引き上げてきてね。
要らんわって言うのもあるんや中にはね。
でも「しもた!西尾にとられてしもた」って
悔しがってる人もおると思うわ。


ハハハハ

西尾さん顔   そりゃ、ボクらでもあるもんな。

それがそうや、エボナイトの万年筆とかね。
インキ止めに使うキルクをみな
治さんといかんでしょ。
せやから吸入だけ売ったんや、
ものすごあったんや。
その時は万年筆の売り方知らんから。

今やったらな、シモタ〜!てことやで。
やっぱりカンタンやからな。

ウチらは安もんばっかりやから、
上等モンは知らんからね。
上等なヤツを使とるから。
輪はいつも光ってるから
こういうクリップでもねぇ。

ほんでさっき言うてたやめよった所の会社なんか
職人さんたんとおるし、
「西尾さんなんぼでもええから
引き取って欲しい」と言われたら、
「これイラン」「あれ貰とこ」言われへん。
何もかも要らんもんまでまとめて
引き上げて来た。

そんな中に、仕事の道具も
そんな職人さんが何十人といてたら
買い置きしとかんことにはならんからな。
そんな道具もいっぱい引き上げて来たんや。

実際万年筆屋って、辞める言うて
付属品とかカンタンに
処分できるもんやおまへんねん。
万年筆はぎょうさんの付属品があって
できるもんやさかい、
ウチとこ失ってもうたらやな、
ホンマ宝のもちぐされ。

一時はね、生野区に多かってん。
生野区と東成。


ーー

へぇ。

西尾さん顔 あこらは万年筆屋のメッカやってん。
職人さんでもねぇ、たんといてたし。

インキ止めとかいうのは手凝るでしょ。
中押し言うようなもんはカンタンやねん仕事。
外引くだけやもん、後は付属品で女の子でも
加工できるようにやるから。

せやけど、こういう吸入いうのは
「テコ」切るのにワシらようせんから、
外注さんとこ持って行ったら
開けてくれよんねや。
開けたらこっちでピンセットでつけるんや。

エボナイトは割れるからキチッと
合わせなイカンねん。
そういうのは東京の人間しか
限られてることやねん。職人さんにはな。

昔はエボナイトの万年筆の職人さんいうたら、
大工さんより給料よかったんや。
その人がな、大阪へ出てきはって、
なんの事情かは知らんけどな。
なんか会社であったんかエエ職人さんが
ウチ来てくれはって、その人に教えて貰ろてん。


ーー

へぇ。

西尾さん顔 その人はなんでもできる。
道具からみな作りはる。
そりゃね、道具作らんことには
仕事できんでしょ。一所懸命覚えんとね。
ワシはようせんかったけどな。


ハハハハ

ーー   できはったんでしょ?

西尾さん顔 ハハそりゃできるよ。ちょっとぐらいはな。
せやけどものすご器用な人が多かったよな。

難しい仕事って言うたら難しいけど、
その時はそれが仕事や思うから覚えてしまうわな。

イヤイヤやってても何年かやってたら
追いつくのと一緒でね。
職人さんと一緒でね。
ワタシはあっち走りこっち走り。
だいたい外回り好きやからね。

職人さんは中でやってもうてオヤジなんか
ペン付けするのん専門やったからね。
昔は女中さんっていてたやろ。
シアゲ屋さんいうのただチューブ付けたりする
内職屋さんもあったんよ。
それで飯食えたんよ。


ーー

それはこの近所でされてたんですか。

西尾さん顔 いや、あっちこっち矢田のほうとか、
自転車で天王寺とかやったらしょっちゅうや。
ワシが作ったんのもありまんねやで。
売れへんだけのことで。


ハハハハ


ーー
 
そんなこと無いでしょう。

西尾さん顔 輪っか抜けたりってヤツはワシのんや。

ハハハハ

西尾さん顔   こういうのんもね、
長いこと置いといたら抜けてくるんよ。
細なって来て。
輪が抜けるいうことはね、金属が弱ってきとる。


ーー

劣化する物は劣化しますもんね。

西尾さん顔 そや、はじめから痩せてるもんは
入れられへんからね。

ちょっと硬いめのヤツ、
ポンポン叩いてやっていくヤツやから。
広がるわけある程度、それで止まってんのん。
止まらんようなヤツは今言うたように
中輪いうヤツな、
これを入れるとパッと張るでしょ。

せやからこういう中輪はるいうのんは、
ええ職人さんしかでけへんし、
エエ仕事する人や。


ーー

そういうとこを見ると
ええ万年筆かいうのがわかるんですか。

西尾さん顔 そうそう。

ーー

素人でも分かる
イイ万年筆の見分け方はないですか。

西尾さん顔 どうやろ〜そりゃこのネジの合わせ方とか。
いい仕事してはる人はこの中管とかね、
そういうのんでもキチッと合わしてはる。
固くも無し柔らかくも無し。

ワシらなんかは、
こういうもんで抑えてごまかすんや。

2-3写真5

ハハハハ

西尾さん顔   こういうもんで抜けんように。
あんまりやると割れるんやパーンと。
そこらが難しいねん。


ハハハハ